私のルネサンスごはん ごはんとおかずのルネサンス

第5回:則久郁代さん(管理栄養士・さぬきフレンズ代表/香川県三豊市在住)

則久郁代さん プロフィール

医療法人社団岐山会篠原記念病院にて管理栄養士として勤める傍ら、食育ボランティアチーム「さぬきフレンズ」の代表を務める。料理教室講師歴としては1998年より(現在~)松下寿電子株式会社「松寿会」三豊地区の料理講師を務める他、丸亀市教育委員会主催『青年料理教室』の講師や、NHK簡単クッキングの出演経験も。

2007年に「大地といのちの会」の吉田俊道先生に出会い、『生ごみリサイクル元気野菜作り』の活動を知る。その後、2008年よりボランティア活動の中に『生ごみリサイクル元気野菜作り』を取り入れ更に食の大切さを伝える。2010年さぬきフレンズを結成。現在、生ごみリサイクル元気野菜作り、親子料理教室や男性料理教室・保育所等での食育講演など“食を通してみんなのこころと体を健康に”をスローガンに様々な食育活動を行っている。

2011年には教育振興機構“ゆめ基金”の採択を受け、土作りからの野菜作りに始まり料理までの3回シリーズの親子イベントの最終回として収穫した野菜で作るルネサンスごはんの講習会と弓田亨の講演会も行った。24年度も“ゆめ基金”の採択を受け土作りからのイベントを企画・4月よりスタートしている。

玉名の近松さん(3月の「私のルネサンスごはん」インタビューに登場)の料理教室に参加されたり、熊本の永野さん(4月の「私のルネサンスごはん」インタビューに登場)とも、同じ食育活動を通じて交流がある。

さぬきフレンズHP >>

【その1】医療と食の狭間で、ジレンマを感じることはあります。
香川は砂糖の消費も多く糖尿病患者も多い。
砂糖・みりんを使わない料理法を見て「これだ!」と思いました。

──則久さんは病院の管理栄養士をされているということですが。食と医療の狭間でジレンマを感じることなどはありますか?

則久郁代さん(以下:則久) 数年前より勤務先の病院給食でも人参と大根、さつまいもは皮を剥かずに料理しています。でも、次亜塩素酸での野菜の消毒などで、かなりの水溶性ビタミンが失われています。ただでさえ栄養価の低下している最近の野菜ですからジレンマを感じながらも、決められた消毒法を守りながらいかに栄養を残す調理法で料理するかを現在試行錯誤しながらの毎日です。

──やはり栄養価の低下、というのは、栄養士をしている則久さんから見ても、「これはどうなのかなぁ」と思われる部分ってあるのでしょうか?

則久 例えばピーマン。あれは緑黄色野菜ということになっていますが、緑黄色野菜は「原則として可食部100g当たりカロチン含量が600μg以上の野菜」のことです。でも今のピーマンはその原則からしたら、既に緑黄色野菜とは呼べません。それでも一応日常頻繁に使われるということで「緑黄色野菜」と呼ばれています。

──なるほど。則久さんご自身は、野菜から栄養素が減っていることには危機感を持っていらっしゃるんですね。ところで則久さんは、お仕事とは別に、2010年に立ち上げたという食育ボランティア「さぬきフレンズ」の代表でもありますね。さぬきフレンズを立ち上げたキッカケを教えて頂けますか?

則久 「さぬきフレンズ」は、「食を通してみんなの心と体を健康に」をスローガンに、特に子供に様々な食の体験をさせることで知らないうちにきちんとした食を考える子供に育つ、という食の思い出作りを応援するという主旨で立ち上げたボランティアチームです。私はそこの代表をしていますが、栄養士が主体の一般市民参加型のチームです。現在会員は16名。その殆どが栄養士として病院や保育園等で勤務する中、仕事の合間を縫っての参加です。また、子育てしながら親子で参加している会員も。よく集まるメンバーは5~6名程度。和気あいあいと同じ方向を向いて頑張っている同志たちの集まりです。

 活動の一つに、捨てる生ゴミを土に戻すことで新しい野菜として命を繋ぎ、私達は、その命を頂いて生きるエネルギーに。子ども達が生ゴミリサイクル野菜作りを通して、命の循環や、全ての命への感謝の心と愛情や優しさ・強い精神が育つことを夢見ています。それに、腐敗と発酵の違いを体感させたい!という思いも強いです。





※食育講座で子どもたちに指導する則久さん。

──なるほど。ただ子どもに限らず、賞味期限で判断してしまうのは、都会に住む大人たちも同じかもしれません。自分で匂いを嗅ぎ、自分で判断する、というのは、本来人間が生きていく上で非常に大事な本能なはずですが、便利な暮らしは、そういう人間の本能を失わせてしまうのかもしれませんね。やはり土作り、野菜作りをするようになって、子どもたちに変化は見られましたか?

則久 微生物がどんどん増えて土の中でおしくらまんじゅうしている土に手を入れるとね、「うわぁ、暖かい」って子どもたちも驚きますよ。それに、腐敗ではなく、発酵分解だから臭くないんです。

──そういう体験で、土や土の中の微生物という生き物と触れるというのは大事かもしれませんね。ところで、ルネサンスごはんのことは吉田先生経由で知ったそうですが。

則久 はい。吉田先生のホームページを拝見した時に、弓田さんと、弓田さんが考案したというルネサンスごはんの存在を知りました。

──則久さんがルネサンスごはんに興味を持った理由を教えてください。

則久 実は香川県というのは、食文化的に砂糖をよく使う県民なんです。昔は砂糖が高価だったのでハレの日には存分に使います。お正月に頂くお雑煮も丸餅あん入りに白味噌仕立て。お寿司も合わせ酢はかなり甘いです。

讃岐三白といって、砂糖・塩・綿がそれ。江戸時代には讃岐白砂糖は国産1位と評価されるほどにまでなりました。現在は一部でわずかに作られる程度ですが、今も「和三盆」といわれている讃岐の砂糖があります。昔から、苦労して採れた砂糖は貴重品でその名残が料理にも残っているというわけです。

そのせいか否か香川県は2008年に糖尿病の患者数ワースト1になったことがあります(それまでは徳島県がずっとワースト1でした)。今でも香川県は全国平均と比べると常に糖尿病患者数が多いんです。

またルネサンスご飯でも必ず使われるいりこ。実は香川はいりこの産地でもあります。それなのに、共働き家庭の増加など、以外と手間に思ういりこで出汁を取るという作業が家庭から少なくなってしまいました。

そういうこともあり、香川の特産品でもあるいりこを使い、なおかつ、砂糖・みりんを使わない弓田さんの料理法を知って、「これだ!」と思ったんです。

ルネサンスごはんを実際に食べたことのある方からも、「今まで食べた玄米ご飯の中で一番おいしかった」というのを聞いていて、是非食べたいと思っていましたし、現代の食生活で不足している栄養を「いりこを加える」という形で補えることにもとても興味を持ちました。

──その後、どんな風に日頃ルネサンスごはんを取り入れていますか?

則久 それまで玄米を炊くときは実は圧力釜を使っていました。でも、弓田さんのやり方(オリーブオイルを加え、炊飯器で普通の炊飯モードで炊く)で炊いてみて、柔らかくておいしいのにびっくりしました。主催している料理教室で作って紹介したり、体がしんどいなあと思ったときにはこのご飯を思い出して食べたくなります。

──よく作るメニューや、自分なりのアレンジなどあれば教えてください。

則久 鶏やきのこを沢山いれた炊き込みご飯はやみつきになりました。職場で急に炊き込みご飯が食べたくなり、家に電話してご飯は炊かないで置いておいてもらい、帰宅後作る、という日があります(夕食は20時頃になり、みんなを待たせてしまいますが、それでもそのご飯は家族にも好評で喜ばれます)。

 それから、味噌汁は時間が無い時は水に昆布などを浸けないでそのまま鍋に入れて煮出します。もちろん具も入れて煮込みます。他のおかずを作っている間に意外と昆布なども柔らかくなります。それから煮物やサラダにも入れるなど、何にでもいりこを使います。粉末のいりこも一緒に入れます。


その2へ・・・

【その2】2011年11月27日に開催した弓田亨の講演会+ミニ料理教室を終えて──。これからはごく普通にいりこを使い、捨てないで丸ごと頂くことが、当たり前になれるように料理教室などをして広めていきたい。


 


このインタビューに関するコメントはこちらからもどうぞ


このページのトップへ戻る

© IL PLEUT SUR LA SEINE Kikaku Co., Ltd.All Rights Reserved.