ブックタイトル輸入カタログ2014

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概要

輸入カタログ2014

24何故フランスで食べるチョコレートはおいしいのに、日本ではおいしくないのか?パティスリーを開店してから、次第にチョコレートを使ったお菓子の数も増え、輸入されるものの中で自分なりにおいしいと思えるチョコレートを使っているつもりでした。しかし店に余裕が出来始め、再びフランスへ行くようになった時、フランスで食べるチョコレートのお菓子は味わいが鮮明で個性的な力にあふれ、とても深い香りと味わいがありました。改めて同じメーカーであっても、日本に輸出されているものはそのほとんどが日本向けの手抜きの劣悪な品質であることに気付き、何とかフランスで供給されているものと同じ品質のチョコレートを日本にもたらすことが出来ないだろうか、と考えました。ある時、ドゥニさんが「パリ近郊に小さいが個性的なショコラトゥリーがある」と教えてくれました。そして社長のドゥルシェ氏と会い、チョコレートをはじめ、いくつかのプラリネ、ココアなどを味見しました。特にプラリネ類のおいしさは驚くべきものでした。しかし実際にお菓子に使ってみないことには、その個性、味わいの機微は分かりません。恥ずかしいことですが実は私は未だこの時、チョコレートの味わいを十分には理解していませんでした。確かに当時は他に輸入されているものよりはうまいようだ。そんな程度の理解しかありませんでした。私はドゥルシェ氏に「このチョコレートと同じ品質のものを、間違いなく私たちにも届けられますか?」と聞きました。彼はこう答えました。「私は自分の作るチョコレートに誇りをもっている。自分の手で、自分が作るチョコレートの品質を落とすことなど、どんなことがあっても出来ないし、あり得ない」その言葉に私は安心を覚えました。ペック社のチョコレートが私の店に届き始めました。半月ほど毎日、チョコレートを他のメーカーのものと比較しながら食べ続けました。そして少しずつ、味わいの微妙な表情が分かり始めてきました。そして実際に何度もお菓子を作りました。一ヵ月ほどの後に、私は自分がとんでもなく幸運な男だと確信をもつようになりました。どのチョコレートをとっても香り、舌ざわり、口溶け、味わいに少しも切れ目がなく力を持った味わいが感覚に迫るのです。ペック社は年産1000トンの小さな工場です。正に個性豊かな力をもったカカオ豆が集められていると思いました。少ない生産量だからこそ、良いカカオ豆を密度高く使えるのです。そして何よりドゥルシェ氏のチョコレートへの想いが熱く伝わってくる、極めて理知的な、私の心を揺さぶる味わいでした。私はペック社のチョコレートと出会い、ドゥルシェ氏との交わりの中で、チョコレートの味わい、素材としての役割を深く理解してきました。芯のある鋭さそのままの香りをもった“スーパー・ゲアキル”、上品な深い慎ましさをたたえた“アメール・オール”、両の頬がうれしくゆるむ優しいおいしさの“ラクテ・エクストラ”、例えようのない懐かしさに満ちた慈愛をたたえる“ショコラ・イボワール”…。さらに、それらのチョコレートで作ったお菓子は私に、あまりにも大きな驚きを与えました。それまでのお菓子がまったく異なる表情に変わってしまったのです。すごい力があるのです。香りが、味わいが、凛としていて、私の舌の上に、鼻孔で開くのです。それは、すべてのチョコレートのお菓子に、新たに命を与える味わいでした。ここから私のチョコレートのお菓子は一点の曇りもない味わいとなりました。皆さんは自分の感覚でチョコレートの味わいを理解することが出来ますか。もしヴァローナのチョコレートが一番よいチョコレートと考えているならそれは、「私はチョコレート味音痴です」と自ら言っているようなものです。ヴァローナ社のチョコレートは少しもおいしくありません。クラシックなガトー・ショコラなどチョコレートのお菓子を作り、ペック社のものと比べてみてください。あまりの味わいの違いにがくぜんとするでしょう。それが真実なのです。有名なフランス人ショコラティエや日本のシェフがよいと言っているからでは情けない。実は彼らもそんなにチョコレートの味は分かっていません。何故ならヴァローナ社のチョコレートが一番旨いと思っているのですから。日本のパティスィエはチョコレートの味なんか分からない