ブックタイトル輸入カタログ2014

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概要

輸入カタログ2014

2 私は今、これまで誰もが到達しえなかった孤高の味わいの領域にいます。誰も私以上に真にフランス的で、真においしいお菓子を作ることはできません。いや、そんなことはないと言われるのなら、私はいつでも受けて立ちます。そして、イル・プルー・シュル・ラ・セーヌは店の前の看板に恥じることなく「日本で一番おいしいフランス菓子」と掲げてお客様を迎えています。そして多くのお客様やパティスィエがフランスよりおいしいフランス菓子と言ってくださいます。 本当においしいフランス菓子を作るためには何が必要か。勿論、卓越した技術と舌、そして私の目にかなう素材です。 私にはこれまでの歩みの中で研ぎ澄ましてきた、他の誰にも触れることのできない味わいの感覚があります。私はお菓子作りのための素材を選ぶ時、フランス人や有名パティスィエが推奨しているからといってそれを選ぶようなだらしのないことはしません。誰もが凌ぐことのできない、この舌の感覚で素材を見極めます。私が選んだイル・プルー・シュル・ラ・セーヌの素材を知らずして能書きを語ってはいけません。私の選ぶ素材は間違いなく貴方が作るお菓子を他のどれよりもおいしくします。 実はまだ私自身も1990年代の初めごろは国産の果物や乳製品などの産物がどうしようもない状態まで来ていることはほとんど理解していませんでした。しかしフランスでの素材に対する記憶のもとに比較できる、フランスから輸入されている食材の劣悪さはよく理解していました。主にフランスから輸入される菓子材料は、サプライヤーは初めはフランスで流通させるものと同じ高品質のものを供給し、こちらの様子を見ながら少しずつ品質を落としてきます。そして最終的に「こいつらは何も分かりゃしない」と判断するとフランス人とイタリア人は徹底してやりたい放題のことをやってきます。そしてほとんどの食材がどんどん、どうしようもない品質へと落ちていきます。オ・ドゥ・ヴィ、リキュール、コニャック、カルバドス、チョコレート、パートゥ・ドゥ・マロン……。ほとんどが日本向けに作られた手抜きの低品質のものなのです。 私は常々材料問屋さんや輸入業者の方々にこの事実を熱く伝えてきました。フランスからの製菓材料の品質の劣化が著しく、さらにそれは進行していることを、そして何とかこの状態を変えてほしいと頼んできました。しかし状況は少しも改善されません。日本に来るグラン・マルニエ、コワントゥローは薄っぺらなオレンジの香りの砂糖水のような劣悪極まりない品質です。日本人のセールスにこのことを言っても、「私はフランス人の言っていることを信じます」の一点張りでした。日本人の最前線の技術者の言うことをまったく相手にしません。青い目への劣等感。これはどうしようもありません。彼らは青い目を目の前にすると何も言えないのです。「あなたたちがやってくれないのなら、俺は自分でやる」 それが捨て台詞でした。もうその言葉が吐かれれば、私はいつもの鉄砲玉です。何も目に入りません。いつもそのことばかりを考え始めます。「こんな無謀な事を始めても絶対うまくいくわけがありませんから、輸入業務なんてやめましょう」 何度も周囲から言われました。でも鉄砲の引き金はひかれてしまったのです。