ブックタイトル輸入カタログ2014

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概要

輸入カタログ2014

40私なりの味わいの分析法です。味わいを三つの要素に分けます。香り、食感、味が一つの大きな全体の味わい、おいしさ、まずさを作りだします。「香り」は口に入る前の香りから続き、飲み下した後の残り香までもが含まれています。これは食べ物から昇化する気化成分によって鼻腔で感じる化学的反応です。「食感」は口に入れてからのパートゥの崩れ方、口溶け方、喉ごしまでの、様々な種類の圧力とその強弱の感覚です。これにバターやチョコレートのカカオバターなどの固体から液体に溶ける時の融解熱などが含まれる物理的な感覚です。融解熱は舌から多めの熱が摂られるので、シャープで涼し気な口溶けを感じさせます。三つ目が「味」です。これは唾液に溶けた成分が舌に与える化学的な反応です。この三つが口に入れる前の香りから飲み下した後の喉ごし、残り香まで含めた過程の間で、多重性と多様性をもって立体的に複雑に影響し合い、一つの味わいを作り上げます。味わいには絶対的な味わいはありません。他の様々な要素との相対的な関係なのです。本当においしい味わいが、何か異なる香り、食感、味わいの一つでも加わることによって、全くまずいものに変わってしまいます。勿論、この反対の場合もあります。この三つの要素の中で最も大事なのが香りなのです。人間のDNAの情報の中には無限の食べ物に関する良い情報、悪い情報が蓄積されています。まず香りは目の前にある食べ物が、これを食べても命をおびやかすものか、身体に良いものかを見極めようとします。もし毒を誤って口に入れてしまえば、それで命は停止してしまうので、あらん限りの情報を駆使して判断しようとします。口に入れて大丈夫と判断した場合も、実際に噛んでみた食感によって、さらに安全性を確かめようとします。そして舌に感じる味によっても、更なる最終的な確認をします。まだ飲みこまなければ大丈夫かもしれません。毒を飲み込んでしまえば、取り返しのつかないことになりかねません。そこで口に入れる前の香りから最大限の情報を得て的確に判断しようとします。本当においしくたくさん取り入れるべきものだと判断されたものには、安堵の感覚が生まれます。これがおいしさなのです。本当においしい、心を打つお菓子や料理には必ず印象的な香りがあります。私共イル・プルー・シュル・ラ・セーヌのお菓子・料理は、もちろん食感、味も大事ですが、香りを特に大事なものと考えています。私共の食べる人の感覚に訴えるおいしさには必ず豊かな香りが感じられます。食感、味は変わっていないのに本当に良い香りを加えると、全体のお菓子の味わいが生まれ変わってしまうのです。特に日本の生クリーム、牛乳、卵その他の素材は味わいや香りが乏しいので、フランスでお菓子を作る以上に、バニラエッセンス等の香りの使い方が大切になります。香りは味わいの最も大事な要素