今年で30周年! イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ

30周年を迎えて

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一日一日を、一つ一つのことを、ただ無我夢中でやってきました。
一つのことが終わるとすぐに次のことを始めて夢中になり、それ以前のことはあっけなく忘れてしまう。
そんなことが毎日の30年でした。一つのことがあっという間に疾風のように通り過ぎていく。
多分あまり幸せなことではないのだと思うのですが、皆が真実と思っていることの裏にある真実が見えてしまう。世の中の動きより10年先が見えてしまう。10年先のことだけ考え続ける。いつも世の中が遅れて 後を追ってくる。とても孤独な歩みでした。

パティスィエの常識に挑み「頭のおかしい菓子屋」と思わしめた『パティスリー・フランセーズそのイマジナスィオンⅠ』、それまでのお菓子作りの本のあり方を根底から覆した『少量でおいしいフランス菓子のためのルセットゥ』。
自分のフランス的な味わいを完遂するための無謀すぎるフランス、スペインでの素材集め、輸入業務開始。
全く資金のない中での狂気の代官山移転。
自分が歩んできたことは後世に残す義務があるという考えから作った毎年大きな赤字続きの小さな出版部。
そしてフランス的な味わい、真実の食を追い求める中での当然の帰結としての「ルネサンスごはんプロジェクト」。
本当においしいフランスで飲むものと同じ味わいのワインの輸入方法の執拗な追求と確立。
やっとたどり着いた自分のフランス的な味わい「ヘーゼルナッツのロールケーキ」。

とんでもないことをよくもこれだけし続けてきたものだとあきれはててしまいます。
よくもつぶれないでやってこられたものです。正に狂おしい思いとほとばしるエネルギーにまみれた30年でした。
でももちろん、こんな破滅的な生き方しかできない自分が30年走って来れたのは、多くの人に支えられてきたからに他なりません。多くのお客様、教室に通われた生徒さん、パティスィエ達、そして多くの社員。本当に多くの方々の顔が思い起こされます。
本当に有り難い、多くの物好きな人たちに支えられてこの30年がありました。

30年、そして私も68歳になりました。私は少しは冷静になれるのでしょうか。
いえ、やっぱりこれまでと同じように突っ走る晩節しか待っていないように思われます。
私にはまだまだやることが多くありすぎます。突っ走るしかないんです。

30年間の身に余るご厚情に心よりひれ伏して御礼申し上げます。
そしてさらなるお力添えをお願い申し上げます。

平成27年3月吉日
イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ
弓田亨
椎名眞知子
山脇光二
福田健太郎
山崎かおり

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